技術新時代、大学からも宇宙へ

近年すっかり停滞気味とも思われていた技術大国日本だが、ようやく新しい動きが見え始めてきている。

数年前、旧ライブドアホリエモンこと堀江貴文氏が新たに宇宙事業に乗り出し、最終的にはロケットの打ち上げも成功させたいという発言をした。当時は「落後者のうわごと」として日本国内では相手にする人はほとんどいなかった。
たしかに宇宙開発のように莫大な初期投資が必要となる事業を民間人が出来るとは到底思えない。
ところが実はアメリカでは既に実現していることなのである。
アメリカではNASA主導の宇宙開発を改め、宇宙ステーションへの輸送業務やロケット開発をボーイングなどの民間に委託しているのだ。
もちろん出資金は国が支援する。NASAと民間で共同することで民間の技術の応用や効率性を高める狙いがあるようだ。
一方、日本ではそういった話はめっきり聞こえてこない。
宇宙事業はJAXAの独占事業のままで、民間と共同などという事は政府も全く考えていないだろう。
しかし、日本のように事業を政府が独占することは当然有害でしかない。民間の技術が育たないし、国が飼っている組織ではイノベーションも起こりにくい。何より財政再建を掲げておきながら莫大な予算が必要となる事業の効率化を図らないことは矛盾している。
堀江氏を支援するか否かは別として民間と共同で臨むべき事業であることは間違いないだろう。

宇宙事業は21世紀最大のビジネスになる可能性は高い。
20世紀は月に行く事が精いっぱいであったがこれからはビジネスにも繋がるだろう。
現在は新エネルギーや環境事業が注目を浴びているが、これらはもう20世紀のビジネスの残りカスでしかない。このほかにも石油や石炭などの既存エネルギーの取り合いももう大きな利益を生まないだろう。既に地球は開発し尽くしてしまっているのである。
中国、インドの開発がひと段落し、次はアフリカであるが、アフリカや中東は民族問題によりうまいビジネスは難しい。
そこで全く新しいビジネスのフィールドとして期待されるのが宇宙なのである。無限に広がる宇宙空間のスペースをどう使うか、宇宙不動産の権利は誰にあるのか。宇宙空間に居住スペースが出来たとき、酸素や宇宙食の販売権は誰がもつのか、宇宙と地球をつなぐ通信事業も見逃せない。
これらの宇宙事業の市場規模は文字通り「天文学的」なものだろう。
国営のまま事業を進めれば競争力が養われず、アメリカやロシアなど各大国が挙って狙ってくるであろうビジネスチャンスをものにすることはできない。

そんな中、優れた技術を持つ一部の大学では独自に宇宙開発を行う取り組みをしている。
東大、東工大、東北大、日大、香川大などは人工衛星の独自開発に成功している。
2003年に東大と東工大が実験衛星(XI)をロシアで打ち上げた。これは先端技術をもつ大学の中でも当時はかなり異例の取り組みであった。
2005年には東大の衛星(ひとみ)、2006年には東工大の衛星(CUTE)、日大の衛星(SEEDS)、2008年以降は東北大の衛星(雷神)と香川大の衛星(KUKAI)などが打ち上げられた。

これらは特に技術力の高い大学であるが、今後は支援さえあれば企業などの研究機関も積極的に研究開発に乗り出すだろう。
金融や第三次産業などがもてはやされる時期もあったが、日本の基幹はやはり技術である。
21世紀最大のビジネスになりうる宇宙ビジネスで日本が勝つために産学の事業参入態勢の支援をすることは政府の至上命題なのである。